2016年 07月 30日
![]() まさか、1500円から864円にまで値下げするなんて…と、突然の価格改定に驚かされた3DSのダウンロード配信専用タイトル『鋼鉄帝国 STEEL EMPIRE』。そこまで安くなったのなら、推すしかないだろうという事で、今更、今作に関する記事を書いてみる。 こんな万人向けと言い張れるシューティング、なかなかあったものじゃないのです。 ≫鋼鉄帝国 STEEL EMPIRE | ニンテンドー3DS(任天堂:商品&購入ページ) ※体験版のダウンロードもできます。 ■二種類の機体を操縦して、軍事国家に正義の鉄槌を下すべし! ゲーム内容は横スクロールで展開する、ステージクリア型シューティングゲーム。シルバーヘッド共和国の戦闘機パイロットとなり、侵略を続ける軍事国家モーターヘッドに正義の鉄槌を下すべく、全七つのステージを駆け抜けていくというものだ。 ![]() 本編の流れは至って単純。自機を操縦し、迫り来るモータヘッド軍の敵機を撃ち落としながらステージを進んで、最後に待ち構えるボスの撃破を目指すというもので、シューティングゲーム王道中の王道の構成となっている。 少しだけ掘り下げると、今作では本編攻略開始前に難易度とプレイヤーが操縦する機体を選ぶ事になる。難易度は全四種類。イージー、ノーマル、ハード、ベリーハードが用意されており、その中から一つ、お好みのものを選ぶ。そして、難易度が選び終わると、次は機体の選択となる。機体は全二種類。その特徴は下記の通り。 ![]() ≪エピトリカ≫ 高速戦闘機。 平均的な性能を持った自機。小柄故に移動周りに長ける。 ![]() ≪ゼッペロン≫ 飛行船。高い攻撃力を特色とする自機。 エピトリカよりも大きい為、移動力で劣る。 これら二つの手順を踏むと、ようやく本編たるステージ攻略が開始し、以降はそれに徹する事になるというのが大まかな流れだ。正直、何を今更な感バリバリだが(汗)、昔ながらのシューティング全開な構成になっている。 なお、難易度は最初に選んだものを後から選択し直すのは不可能(自機は可能)。そこもまた、昔ながらのシューティング全開。ド直球の作りになっている。 ![]() システム周りも、専用アイテムを獲得する事で攻撃が強化されるパワーアップシステム、周囲に居る敵に広範囲且つ、強力な一撃を加える『ボム』等、これまた王道中の王道の作り。ただ、特徴的な要素としてショット方向の概念があり、敵の出現位置に応じて前方、後方にショットを撃ち分けながら対処していく展開が繰り広げられるようになっている。ショットの撃ち分け自体は簡単で、Bボタンで前方、Yボタンで後方のワンボタン操作で即座に行える設計。この操作を敵の出現位置に応じて行い、先手必勝の精神で攻撃していく。決して真新しい要素という訳ではないが、このような操作がある為、ステージ攻略時は戦術的な立ち回りが要求されてくる事もしばしば。敵の出現パターンもそれを考慮したものになっているなど、独特のプレイ感を演出する要素に仕上げられている。 もう一つ、特徴的な要素としてはパワーアップシステム。アイテムを取る事でショットが強化される仕組み自体はよくあるものなのだが、今作にはレベル制が採用されており、最大20レベルまでショットを強化できるようになっている。しかも、一度上げたレベルは、仮にミスしたとしても減らない。一般的なシューティングゲームだと、ミスするとそれまでのパワーアップが失われてしまうのが御約束だが、何と今作にはそれが無く、ミスした後も自機のショット攻撃の強さが維持される。弱体化しないのだ。その為、ミスした後に極端に難易度が上がるとか、プレイ感が変化すると言った事も無し。そのままのプレイ感覚と難易度が維持される、シューティング初心者にとても優しい設計になっているのだ。 ![]() 更にもう一つ、今作は体力ゲージ制を採用。敵の弾が被弾しても即撃墜されてミスとならないので、安心してステージ攻略に臨んでいけるのだ。シューティングと聞いて、グラディウスなどの著名な作品をイメージしたり、そこから来る「被弾したら問答無用でミス」という、シビアさが脳裏を過ぎったりするかもしれないが、今作にそんなシビアな要素は皆無! 他にもシューティングゲームが初めてなプレイヤーを対象とした『トレーニングモード』を収録しているほか、ゲームの進行もステージを一つクリアする度にセーブが行われる方式になっているので、一日一ステージの短時間プレイでも遊べる。 ![]() 初心者ばかりでなく、上級者もフォロー。先にも取り上げた最高難易度の『ベリーハード』が用意されているほか、特殊なミッション攻略を目指す『実績』と言ったやり込み要素も実装されており、確かな歯応えを堪能できる。 シューティングゲームとしての作りは至って王道。ショット方向の概念があるのは特徴的だが、それ以外は特に尖った特徴も無く、正統派のゲームデザインに徹している。ただ、体力ゲージ制にレベル方式兼それがミス後も維持されるパワーアップシステムなど、シューティング初心者を強く意識した要素が随所に盛り込まれており、全体的に「優しさ」が強く滲み出た作り。そして、変な笑いがこみ上げてくる高難易度モードにやり込み要素も取り入れるなど、上級者への配慮も施すなど、これぞ正真正銘「万人向け」というに相応しいシューティングゲームになっている。ビジュアルと題材こそ重厚な雰囲気バリバリだけど、中身はお手軽。そして、遊び方次第でドロドロにもできちゃう懐の広い作品なのだ。 ■気軽に横スクロールシューティングの醍醐味を味わえる、優秀なゲームバランス そして今作の魅力は、初心者から上級者まで幅広くカバーした優秀なゲームバランスである。シューティングゲームというと、どうしても敵の弾に一発でも被弾したら問答無用に撃墜される、難しいゲームとしてのイメージを抱きがちだ。中には任天堂の『スターフォックス』のように、被弾してもやられないシューティングゲームもあるので、全てがそうと言う訳ではないが、未だに「シューティングゲーム=被弾したら一発アウト」というルール自体は根強く、遊ぶに当たっては覚悟が必要なジャンルという認識が拭い去れない。今作に対しても、そういう苛烈さをジャンルのイメージから想像し、警戒してしまうかもしれない。 ![]() だが、今作にそのような苛烈さは一切無い。 先の通りに体力ゲージ制を採用しているので、被弾してもそう直にはやられないし、ステージ中には頻繁にという訳ではないが、回復アイテムも何度か出る。また、撃墜されたとしても、失われるのは攻撃サポートを行ってくれる『オプション』だけ。基本ショットの強さはミス後も維持されるので、弱体化して敵の攻撃への対処が難しくなる事も無い。低い難易度のイージーなら、体力ゲージ制とそのレベルダウンが無い仕様を利用してのゴリ押しもできるなど、とても大らかなバランスになっているので、本当にシューティングゲームに苦手意識のある人でも気軽に遊べる作りになっているのだ。 ![]() そんな緩い仕様だから、初心者でもノーコンティニュークリアが狙い易いのも秀逸。そして、それが通常難易度のノーマルでも堅持されているのも特筆に値するところである。少しネタバレしてしまうが、今作はイージーだと真のラスボスと戦うことはできない。一応、全てのステージを巡る事はできるが、途中で区切られてしまうのだ。なので、しっかりとした結末を迎えたいのならばノーマル以上の難易度で攻略しなければならない。そうなると、大変そう…と思うかもしれないが、これがまた全然そうでもなく。イージーをほんの少し難しくした程度のバランスなので、変に気負わず楽しめる難易度にまとめられている。また、一度イージーをクリアしていれば、その経験を活かしての攻略もできる。敵配置自体はイージーとそんな変わらないので、対処法が分かっていればすんなりと乗り越えていけるのだ。 さすがに真のラスボスとの戦いはそうもいかないが、そう言ったバランスでまとめられているのに加え、体力ゲージ制やパワーアップの維持も失われないので、攻略の敷居自体は低め。また、各ステージを攻略する度にセーブが実施されるので、一日一ステージという緩やかなペースで進むのも良いし、ゲームオーバーになりそうという危険に見舞われたら、あえてリセットしてセーブデータをロードしてやり直す手も使える。ステージの最初からやり直す事になる点では、ゲームオーバーになるのと変わらなかったりするが、そう言った集中的にプレイせずとも遊べる環境も整えられているので、遊ぶに当たって気負うこともない。集中的に全ステージを通しで遊ぶか、ちょっとずつ遊んでいくかもプレイヤー次第。通常難易度であっても少しの根気とテクニックを身に着ける気持ちさえあれば、ちゃんと乗り越えられるバランスになっているのだ。 「万人向け」というに相応しいシューティングゲームと先に述べたが、本当にそれは嘘ではない。初心者から上級者まで、温くも手強くも遊べちゃう設計になっているのだ。その上級者向けの難易度も、撃ち返し弾とダメージ量の増大という変化が生じるなど、殺意バリバリのバランス。体力ゲージ制なんだから、一番難しい難易度も簡単だろ…とタカを括ったら最後。今作が如何に全てのプレイヤーをカバーしているのかという、丁寧な仕事ぶりに滅多撃ちされるでしょう。併せて実績達成も目指すと、心が折れるかもしれません。 ■随所で炸裂する職人芸の数々 また、シューティングゲームとしての基本的な作りもしっかりとしている。特にステージは敵配置、ボリューム、構成、演出と、一つ一つ入念な作り込みが成されており、確かな遊び応えとそのステージ特有の体験が味わえるものに完成されている。 構成も波乱万丈の一言。最初こそ、オーソドックスに強制スクロールに身を任せて前方、後方に現れる敵機を撃墜しながらボスを目指すというものだが、後々のステージになると斜め方向のスクロールが挟まれたり、脱出イベントが発生するなど、予想だにしない展開が発生してプレイヤーを翻弄させてくる。しかも、いずれも前後にショットを撃てるシステムを活かしたシチュエーションになっているなど、今作特有の要素を活かしたものに完成されているのが見事。脱出イベントはまさに最たる一例で、ショット方向の要素あってこその地形構成と演出にはちょっとした感動すら覚えるかもしれない。 ![]() そして、中型、大型共にボスもインパクト絶大。いずれも前後にショットを撃てる今作のシステムならではの動きと攻撃を展開してくるだけでなく、その大きさ、構造もぶっ飛んでいて、単に見ているだけでも楽しい。 そして、これらのボスキャラクターのデザインもまた、これぞスチームパンクと言わんばかりの仕上がり。細部まで入念に描き込まれたドット絵は職人芸と言わんばかりのクオリティで、思わず見惚れてしまうほどのインパクトがある。同時に懐かしい香りも漂わせており、今時、ここまで本気で作り込まれたドット絵のゲームが拝めるという点でも相当な価値がある。若干、使い回しもあったりなど、徹底的に描き込まれているなりの限界もあったりはするのだが、その気合入れまくりのビジュアルには、90年代のゲームに親しんだ世代ならば心打たれること間違いなし。「これだよ、これ」みたいな感動を覚えることでしょう。 ![]() 他に今作はステージ開始前にストーリーデモも挿入され、それにちなんだ演出もステージ上で繰り広げられる。特にステージ5の演出は素晴らしく、クリア後のデモも相まって、強烈な印象を残すものに仕上げられている。ステージ内の要素だけで完結させた作りも素晴らしく、テキストによる表現を用いずにプレイヤーにストーリーを感じさせる見せ方には、古き良き時代のゲームの魅力と底力というものを感じさせられるだろう。 ■強気な値段で売り出した事が今作最大の過ちにして欠点 操作も基本、スライドパッドとショットボタンだけで遊べる設計なのでお手軽。レスポンスも良好な上、自機のスピードアップと言った強化要素が無いのもあって、単に撃ちまくるだけでも楽しい作りになっている。音楽もスチームパンクの世界観にマッチした、勇ましい行進曲風のものになっているのが印象的。少しやかましく感じるところもあれど、各ステージにおける激しい戦闘を大いに盛り上げてくれる。 そして、欠点らしい欠点は正直な所、無い。強いて言うなら、ボリュームが短めで、エンディングまでなら1時間以内は余裕であること。やり込み要素もコンプリートするだけなら、15時間以内で行けてしまうので、凄くアッサリとした内容になっている。なので、単にエンディングだけを目指す遊びをするのなら、かなり浅いゲームだと言える。 ![]() そして、こういうボリュームだからこそ、当初の3000円近い価格設定が如何にふざけたものだったかが分かる。一応、それだけの設定にするこだわりも見受けられるのだが、ここまでアッサリしているのなら、最初の改定価格(1500円)で売り出した方が普通に良かった。しかも、それだけ強気の値段を設定しながら、おまけ要素は最小限で、とても充実しているとは言い難いラインナップになってしまっているのだから尚更。これが昔のスーパーファミコンやメガドライブ、ゲームボーイ等の時代で考えるなら、安い方と言えるだろうが、今作が供給したのは低価格のイメージが強く、それが当たり前のように定着してすらあるダウンロード配信専用タイトルの市場。そのイメージから著しく反した設定で出したのは、本当に致命的なミスだったと言わざるを得ない。 これでもし、ステージの数が15以上あるとか、メガドライブ版とゲームボーイアドバンス版の『鋼鉄帝国』を収録している、オンラインに対応したスコアランキング機能がある、演出がボイス有りの豪勢なものになっているのなら、高めに設定するのも分からなくは無かったが、結局、そういうものは無いのだから、お話にならない。 2015年初頭、今作は66%OFFという驚愕の割引率でセールが実施され、開発担当の方によると配信当時を上回る売上が記録されたという。そんな結果を残したのも、値段設定を間違った事の証左と言えるだろう。実際は版権とか、様々な裏事情からこの設定になったのかもしれないが、こう言った手軽に遊べてやり込め、完成度もずば抜けてるシューティングゲームを強気な値段で出すのは、折角作った作品を不幸にするだけ。メーカー側には二度とこういう事を繰り返さないよう、肝に銘じてもらいたいなと思うばかりである。 ![]() ■これぞ万人向けシューティングゲームの決定版! あと欠点を挙げると言ったら、最後の実績があまりに安易で鬼畜過ぎるのと、終盤にスチームパンクの題材から脱線した展開が繰り広げられるぐらいだろうか。後者はむしろ、今作屈指の見所でもあるけど、賛否が分かれるかもしれない。 ともあれ、最初に配信された際の価格設定の反動もあって、3DSのダウンロード配信専用タイトルの中でも屈指の割高感が染み付いてしまっている今作ではあるが、今現在ではそれも大幅に薄れ、つい先日にはセール時の時よりも安い1000円以下の価格に改められ、非常に手が伸ばし易くなっている。 繰り返しになるけど、シューティングゲームとしては本当に万人向け。ビジュアルイメージでは重厚なテイストだけど、肝心の内容は一日一ステージ攻略みたいにライトな感覚で遊べる、全く真逆のものになっている。それでいて、上級者向けの要素も充実しているほか、グラフィックと演出と言った職人芸の作り込みが炸裂した箇所もあったりなど、魅力もたっぷり。重厚なイメージとは裏腹に、ビックリするほど手軽に遊べ、深くやり込みもできてしまう今作。気負わず楽しめるシューティングゲームを求めている方ならば是非、遊んでみて欲しい傑作だ。シューティングゲームって一発アウトが当たり前だから自分には遊べ無さそうと思う人も、騙されたと思ってプレイしてみて欲しい。 これなら遊べる!…と、ちょっとした感動を覚えること間違いなしだ。 ちなみに今作と一緒に3DSテーマの『メガドライブ』と『Code Name Steam リンカーンVSエイリアン』を買うと、ホーム画面で起動する際の雰囲気が独特のものになります。双方共に値段もお手頃なので、興味のある方はどうぞ。 ![]() ついでにリンカーンVSエイリアンもなかなかの良作なのでお薦めですよ…と、スチームパンク繋がりで無理矢理推してみるのでした。
by box057
| 2016-07-30 20:15
| お薦めゲーム紹介
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