2016年 06月 18日
今年五月の連休中に遊び切る事を目標にしていた『パンチライン』。 一応、その予定通りに全て遊び切る事はできた。(トロフィーもコンプ) けど、総評としては、当初思っていたのとは大分違う内容で、肩透かしだった。 今作は2015年の4月から6月にかけ、フジテレビの『ノイタミナ』枠でアニメが原作に当たるゲームから先行する形で放送された。 その終了から1年後に発売されたのが今作。宣伝によると、アニメ版よりも人物描写が細かくなり、ストーリーの結末も違うものになるとの話で、その事から自分は当初、複雑な分岐があり、エンディング到達までに結構な検証プレイが要求されるものと思っていた。 しかし、実際は大して分岐はあらず。 数か所にバッドエンドに繋がる選択肢がある程度で、ほぼ一本道だった。その為、エンディング到達までそこまで苦労する事も無く。プレイ時間にして、僅か三日でベストエンディングに到達してしまうほどあっという間だった。正直、拍子抜けも拍子抜け。昨年、同じ時期にプレイした『ルートダブル』を手掛けた中澤工氏がディレクションを担当してるという事で、あれほどではないにせよ、それなりに入り組んだ作りになっているのかと思ってたのに、実際は逆転裁判(厳密にはバッドエンドの選択肢が存在するエピソード)に近い感じとか、脱力するしかない。なので、遊び終えた時に呆気に取られたのは言うまでもなく。それなりに複雑で、やり応えのある作りになっているのかと思ったら、ほぼ一本道のアッサリ仕様とか、楽しみにしてたクチにとってはガッカリ以外の何者でもなかった…。 肝心のストーリーも一応、人物描写がやや細かくなり、アニメ版で謎に終わったキャラクターに対する回答(?)が示されるなど、終盤にかけての駆け足感を薄める改善が見られた。…が、大筋はアニメ版と一緒なので、視聴してた身には新鮮味皆無。実質、完全版を見せられるような感じで、大して驚いたりも、圧倒させられたりする事も無かった。作中で語られる謎も、答えをアニメ版で知ってしまってるから退屈な上、中盤の驚きの展開もアニメ版をなぞってるので、見ていたクチには「え?!」と驚く事も無く、「ここまで進んだか…」と思う程度。実質、二周目を見せられているも同然で、正直、あまり楽しめなかった。もっとアニメ版からガラリと変えているのかなと買う前は思ってただけに、余計にその変わらなさが残念に感じてしまって。むしろ、こんな内容なら、アニメを先に放送しない方が衝撃性を出せたのではないのかと思うほど、メディアミックス戦略の失敗を現すかのような仕上がりになってたのが痛過ぎた。結末はアニメ版と違っていたり、先の謎に終わったキャラクターの答えが示されるなど、全部がアニメと一緒という訳では無かったのだけど、もう少しゲーム版なりの違いを出しても良かったのではないのかと。何というか、全体的に日和ったかのような作りに収束してしまっていて、勿体ない事をするな…と感じてしまった。 そして、ゲーム版の特色たる『イタズラパート』、『イタゴラパート』も、結局は当たりの選択肢と組み合わせを当てていくだけの簡単なものに終わってしまっており、想像以上に浅い。一応、特定の仕掛けを発動させる事で『ラッキースケベ』なピンチが訪れたり、シナリオによっては時間制限を設けるなど、展開には工夫が凝らされているほか、『イタゴラパート』も正解となる組み合わせを手探りで探していく基本的な楽しさはあった。けど、選択肢が少なく、タイミングを見極めると言った要素も無いので、遊びとしての手応えは薄い。もっと派手に変化が起きる作りにしてれば、それなりに遊び応えのある作りにできたのではと、全体的に勿体ぶったまとめ方になってしまってるのが残念だった。 しかも中盤以降、この二つはストーリー展開と併せ、とんでもない立ち位置に回される。詳細は伏せるが…一応、そこまでの展開と設定を考えれば、そうなるのも当然と思える所もあるのだけど、さすがにそれはゲーム的に乱暴過ぎないかと思ってしまった。(ちょっとバレに近い事を言うけど)全否定じゃないか、というか。見方を変えれば、ゲーム自体の根幹と前提を覆す挑戦的な展開と見れるのだけど、あの方法は…ダメでしょう。少なくとも、体験版を配信している事を考えると、かなりマズいやり方だったように思う。もうこの言い方でバレてしまうだろうけど、しっかりと最後の最後まで「勝負」して欲しかったな…。アドベンチャーゲーム故の宿命に徹してしまって、残念だ。 他にもストーリーの度に挿入される主題歌とエンディングテーマがスキップできない(どちらも強制的に見せられる)、一話のチュートリアルと導入部分が冗長、グラフィックが思った以上に低クオリティ(3Dモデルは悪くないが、背景が旧世代レベル)、新規のアニメムービーが完全な紙芝居であるなど、気になった所は多数。 ただ、グラフィックに関しては、その質の低さがロード時間の発生を抑えている所もあって(というか、今作にロード時間はほぼ存在しない)、一概に悪いとは言えないところも。また、既読スキップ、チャプターセレクト、クイックセーブ&ロードなど、最近のアドベンチャーゲームでは最低限抑えておくべき機能は網羅されているほか、操作性とインターフェースも良好で、プレイしていて特にストレスを感じる事はなかった。 他にネタバレ対策として、中盤のある所からスクリーンショット機能が完全に封じられるようになると言った配慮も万全。アニメ版を見たクチには不満に残るストーリーも、見た事の無い人ならばそれなりに楽しめる内容になっている上、内容自体も変に複雑な所は無いので、軽い気持ちで楽しめるのも大きな強みと言える。 なので、普通に佳作~良作と言える出来ではある。ただ、ゲームとしては物足りない感じで、特に『イタズラパート』と『イタゴラパート』に興味を持った人ならば酷い肩透かしを喰らう作り。また、アニメ版を見てた人も、ストーリーの大筋が一緒な為、新鮮な気持ちで楽しめないなど、致命的な欠点がある。そういう事からも、風変わりなメディアミックス展開を仕掛けた事がアダとなった一作…と言った感じ。普通にアニメ化などせず、ゲーム単体で出した方が良かったのでは、と思うぐらいに「知ってしまっていること」に対するもどかしさを痛感させられる作品だった。 これまでにない新しいやり方(ゲーム発売前にアニメ化する)で作品を世に広める、という触れ込みの今作だったが、正直、この内容を遊んだ限りだと大失敗だったように思う。なので、アニメ版を知る人にはそれほどお薦めはできず。逆にアニメを知らない人なら、そこそこ楽しめる内容になっているので、興味があったら遊んでみて欲しいかも。 但し、タイトルの通りに恐ろしく露骨なパンチラシーンが大量に用意されているので、テレビでプレイするPS4版は極めて危険。遊ぶなら、Vita版を強く推奨致します。先の通り、ロード時間も無く、テンポ良く進めていける作りになっているので、尚更。それでもテレビでやりたいというのなら…覚悟を決めましょう。それ以上は何も言わぬ…。 今月の30日は、今作の原案とシナリオを手掛けた打越綱太郎氏の新作にして、極限脱出アドベンチャーシリーズ完結編の『ZERO ESCAPE 刻のジレンマ』が発売となる。こちらは分岐盛り沢山の複雑怪奇なシナリオになっているようなので、今作の不足分を補える作品になっていると良いなと思うこの頃です。 かと言って、前作みたいなオチに終わるのは勘弁な…。
by box057
| 2016-06-18 21:07
| ゲーム感想 / 紹介
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