2016年 07月 23日
一話の異様なテンポの悪さに先行き不安となるなど、初っ端から不穏なムードが漂ってた『逆転裁判6』。先日、追加DLCの特別篇も含め、全てが終了した。 終わってみれば、テンポが悪かったのは一話だけ。残るエピソードは前作と同じくらいのテンポで、驚きの展開も交えて楽しませてくれる作りになってた。また、前作で多少、鬱陶しく感じてた叫び台詞の量も緩和。更に個人的に前作でトラウマになった悪質なサプライズ(…とは言え、悲劇的なサプライズはあったが…)も無くなり、初代以降からの定番だった『調べる』コマンドも復活する等、改善された箇所も多数。 総じて、満足できる内容、良作と断言できる出来だった。 しかし、不満や違和感を覚えた箇所が結構あったのも事実で…。 ※注:以下、本編のネタバレを含みます。 ■最初の掴みが悪過ぎたシナリオ 結果的に全エピソードを遊び終えて、最も問題を抱えてたのは一話だった。繰り返しになるけど、猛烈にテンポが悪い。ナンバリングシリーズでもダントツで、スピーディにストーリーを進めていきたいプレイヤーに対し、喧嘩を売るも同然の出来。日本では無い、外国が舞台という事で、その文化や風習を説明するテキストが多めという点には特に異議はない。それは致し方が無いことだと思った。 一番の問題は…どの道、ゲームのオープニングで盛大にバラされるので言ってしまうが、証人兼真犯人のポットディーノ・ニカワスの演出全般。喋る度にスローテンポでテキストが表示されていく歌が流れる、証言もそんなのだから時間がかかると、何でこんなダルい演出とネタを仕込んだのかと、考案したスタッフを問い詰めたくなるほどの苛立ちを覚えた。他に一話だと、亜内検事のモーションも少し冗長に感じたが、普通に許容範囲。むしろ、ポットディーノが酷過ぎたのもあって、そんなに気に障ることはなかった。ついでに言うなら、当人も彼のおかげで空気気味だったし。 この演出の所為で、一話のプレイ時間も間延びしてしまっており、一番最初の掴みとしてはもの凄くマズい作りになってしまっていると思った。シナリオ自体の出来は良好で、綺麗にまとまってたのだが、演出がダルくて再プレイ欲が湧かないものになってしまってるとか本末転倒過ぎる。何気に前作にも、歌いながら証言するキャラクターは居たけど、歌のテンポ自体が良かったのもあって冗長さは皆無だったし、話しかける度に歌ったりする訳でもないので、そこまで酷くなかった。そのネタが前作で受けたからなのかはスタッフのみぞ知るにせよ、もし、本当にその進化系を見せる意図でこれを入れたのなら、とんでもなく愚かな所業だったとしか言い様がない。 それに仮にも一番最初の掴みとなるエピソードで、「この後もこんな冗長な物語が続くの?」という不安を募らせるまとめ方をしていたのも拙かった。正直、今回初めて『逆転裁判』に触れたプレイヤーがこんなシナリオを見せられて、この後も見ようという気持ちになるだろうか…?個人差はあれど、あの内容では先に進みたい意欲は殺がれるだろう。胃もたれしかねないし。前作の一話も少し長めで、もう少し短めにまとめられなかったのかと思う所はあったが、今作のように冗長な演出は少なかったから、テンポは保たれていた。その時と同じぐらいのテンポか、或いは2~4ぐらいの程度にしていればそんな事も無かったのだが。本当、そういう意味でも禁じ手を使い過ぎてたように思う。 一応、今作には既読、新規問わずボタンによるメッセージスキップを可能にするオプションが実装されているので、これをONに設定すれば歌が飛ばせるようになる為、幾分マシになるけど、そういうのを弄らないとストレスフルな作りになってしまうというのも正直、どうなんだ。より凝った演出を表現したい意図は分からなくもないが、ストーリーを読み進めたい層(自分もそこに入る)にとっては不快でしかないから、それを踏まえた程度に調整して欲しかったと思う。結局、配慮の甘さにより、シリーズきっての二度とやり直したくないエピソードとして終わってしまったのが凄く残念だ。 けど、2話以降に関しては言う事無し。どれも非常に良く出来ていたと思う。 中でも2話は『逆転裁判4』の救済を図ったエピソードで、非常に面白かった。或真敷一座の掘り下げ、みぬきのヒロインとしての覚醒、それに強く絡んだ真犯人とその本性など、これが『逆転裁判4』の最終話なら凄く盛り上がったのでは、と思ったほど。王泥喜も主人公として見事な活躍をしており、4最終話の『逆転を継ぐ者』を名乗れるキャラクターになったなと、感慨深いものがあった。あと、真犯人も凄く良かった。個人的に今作の登場キャラクターの中で、一番のお気に入り。悪役街道まっしぐらとも言える清々しさと豹変後にカッコよくなるところが素晴らしかった。或真敷一座を掘り下げる(むしろ彼らを地に落とす?)キャラクターとしても良い立ち回りをしてて、彼こそ二話の立役者だったと思うほど。このエピソードは今回、時間があったらもう一度やり直したいと思う内容。同時にこれが一話だったら、少し印象が違ってたんじゃ…と感じる出来でした。 その後の3話も良かった。このエピソードでは、3以来久々にマヨイちゃんが登場。彼女が主要キャラクターとして絡むシナリオは過去の傾向から、シリアスで悲劇的なものになりがちだけど、今回もその例に倣った強烈な内容になっていた。法廷パート一日目の締め方、事件の真相など、今作の弁護罪という設定を活かしたまとめ方になってたのも良し。ある人物の霊媒も衝撃的でした。あれ、人によっては変な妄想をしちゃうんじゃなかろうか(汗)。これ以上は伏せるけど…。 4話も内容としては完全に幕間回だったが、前作の掘り下げを行う作りになってたのが印象的。ただ、真犯人に関しては救いようのない悪にして欲しかった気も。何かあの設定の所為で後味の悪いエピソードになってしまってたのが残念だった。 そして、最終話に関してはナンバリングシリーズ屈指のボリューム。王泥喜の過去に関する更なる掘り下げ、衝撃の真相など、熱い展開の連続で2話に次ぐ面白さだった。演出的にそれは必要か?…と感じる所もあり、手放しに褒められる出来とは言い難くもあったのだけど、盛り上がりが凄かったし、霊媒という設定の盲点を突く描写があったのが印象的。真犯人が前作のような悪い意味でショッキングな人物ではなく、根っからの極悪人だったのも好印象。盛り上がりが弱く、悪い意味でのサプライズがあるなど、問題を多数抱えてた前作の最終話からよくここまでパワーアップさせたなと思い知らされた。 総じて、2話以降は見事な出来。1話は残念な出来という、少し厄介な評価に終わった。こう2話以降の出来が優れていたからこそ、最初が良ければ…という気持ちが湧き出てくるのがもどかしい。本当、そういう事からも勿体ない出来だなと思ってしまった。だからこそ、余計に次回作があるなら、全話ほぼ粗の無い仕上がりにしてきてほしいなと願う。 あと、追加DLCの特別篇に関しては…正直、(大きなネタバレになるのでボカすが)過去作のとあるエピソードの焼き直し感が否めなかった。それに「とある昔の事故」の話題が出てきて以降の展開、先読みし易いにも程がある気が。途中、ある人物と事故と関連する要素を見つけてから、この人が犯人なのでは…とか読んだら、本当にその人が犯人という展開になってしまって、ちょっと興ざめしてしまった。登場人物の少なさも要因の一つだけど、もう二人ぐらい関係者を出しても良かったんじゃないのかね…。それに、このエピソードも一話のポットディーノほどではないにせよ、キャラクターのリアクションが冗長で、テンポを悪くしてたところがあったし。シナリオ自体の流れと締めは良かったけど、結果的に一話に次いで不満の残るエピソードで終わってしまったのが残念だ。 しかし、真犯人豹変後の姿は予想外だった(汗)。というか、キャラクターデザイン的にもシリーズらしからぬ雰囲気で印象的でございました。何となしに、ファイナルファンタジーっぽいと思ってしまったのは自分だけかな…。 ■シリーズ集大成とも言えるシステムとその裏で システム周りに関しては、『サイコ・ロック』、『みぬく』、『カガク捜査』と言ったナンバリングシリーズの全ての要素を集結させ、『御霊の託宣』というムービーを使った新要素が追加した集大成的な仕上がりになっていた。また、前作で探偵パートの一本道色を強めていた『調べる』コマンドも、4以前の仕組みへと回帰。ちょっとした寄り道もできるようになって、旧作のノリを取り戻したのは好感触だった。 けど、『カガク捜査』の指紋検出は問題あり過ぎ。 『蘇る逆転』や『4』みたいにアルミ粉を無限に撒き散らす事ができず、画面左下に表示されたビーカーが空になると使えなくなるという制限がかけられた。息を吹きかけて飛ばす事で量が回復するようにはなっているものの、そのアルミ粉が全て吹き飛ぶ訳ではなく、四隅に僅かな量が残ってしまうので、回復させる際に細部まで息を吹きかけ無ければならなかったり、残っているアルミ粉が見え難いなどと問題だらけ。 加えて、今回の指紋検出は対象となる証拠品の細部をカーソルで見渡しながら実施していくのだが、この調べられる範囲が広過ぎて猛烈に面倒臭い。それでいて、指紋検出の判定もシビアなのに加え、先のアルミ粉の問題も絡んでくる。 正直、これは普通に4や蘇る逆転みたいなシンプルな作りにした方が良かったんではないのかと。3Dで表現できるようになった事で、本格的な遊びが作れるようになったからこうしたのかもしれないが、返って面倒臭さと煩わしさが増す作りに変貌してしまった。今回の旧作からの継承要素の中では、唯一の改悪だったように思う。 ■サポート有り無しが選べるようになり、改良されたゲームバランス 救済措置や調べるコマンドの制限などにより、前作より手応えのある難易度に改められた。法廷パートの矛盾指摘も、露骨なヒントや真相が丸分かりな表現が抑えられ、2~3に近い難しさにまとめられていた。 かと言って、初心者を切り捨てた訳ではなく、前作にあった何度か指摘を誤ると出現する相談コマンド、ゲームオーバーになってもチェックポイントに当たる所からやり直せるなど、総当たりプレイでもやり通せる設計。 しかも、それをオプションで切れるので、表示したくない欲求もカバー。総じて、前作を適切な加減に調整したバランスで、凄くいい塩梅にまとまってたと思う。 しかし、『御霊の託宣』は少々、難しくし過ぎてた印象も。一応、相談コマンドによるヒントがあるので、理不尽なほど難しくなってないのが幸いだけど、じっくり映像を見ないと察せない矛盾があったのはどうかと思った。具体的には三話の視界がはっきりしてから見えるようになるアレとか、最終話の分かり難いにも程があるサインとか。中でも最終話のあのサインは分かり難くし過ぎだと思った。振り返ってみると、視界に関連した矛盾に問題が集中してしまっていたような。バランスを取るのに難儀したのも察せるけど、露骨にし過ぎない程度にプレイヤーが気付き易いものにして欲しかったと思う。 それと、今回も『サイコ・ロック』と『ココロスコープ』は優しく設定し過ぎではなかろうか。一応、『ココロスコープ』に関してはミス判定を喰らう箇所が追加されたけど、もう少し緊迫感を煽るような表現を入れても良かった気がする。『サイコ・ロック』に関しては言わずもがな。結果的に前作同様にシナリオに沿っていれば、その時点で証拠品が揃ってしまうようになっていたので、作業感が否めなかった。折角、『調べるコマンド』が復活して、寄り道ができるようになったのに前作の構成に倣ったものにするというのはどうなんだろう。ここは正直、旧作準拠にして戻して欲しいように思った。 ■3DCGに改めた弊害は前作以上に。そして、宣伝とのムジュン。 他に気になったところとしては、やはりグラフィック。先のシナリオの所で触れてたテンポとも関連するけど、モーションを凝り過ぎだと思った。 元々、この事は前作の時点でちょっとした問題点としてあったけど、今回、それが余計に酷くなってしまった印象。デザイン担当スタッフの見せたがり欲があまりにも出過ぎ。その所為でゲームの進行があまりにも鈍くなってしまった。一話のポットディーノは言うまでもなく、ナユタ検事やナナシーノ・コンビェ(仮)、特別篇の八久留間来人は最たる一例で、そんなに凝った動きを作らなくても…と思うものが多く、地味にイライラとさせられた。3Dになるとこんな事ができるんですよ、とアピールしたくなる気持ちも分かるけど、それによってゲームプレイが阻害される事を少しは考えられなかったのか。前作でも小さな難点としてあったのに、それを今回、大きな難点に昇華させてしまったのは今作屈指の劣化点だと思った。デザイナーの気持ちも察せるものがあるけど、それによってゲームを気持ちよく遊べなくしてしまってるのはさすがにアウト。オプションのスキップを使う事で一部、省略できるようになるとは言え、ちょっとは自制しろよと、強く物申したくなった。恐らくは次の新作でもこのグラフィックを採用するのだと思うけど、今度は間延びさせないように調整して欲しい…。 もう一つ、気になったのがキャラクター関連。 宣伝で、3以来久々にマヨイちゃんこと綾里真宵が復活するとアピールされていたけど、作中での出番は非常に少なく、むしろ新キャラのレイファが助手的なキャラクターとして描かれてたのはどうかと思った。しかも、ちょっとネタバレになるけど、3話で満を持して登場したと思ったら4話は箸休めなので未登場。最終話で再び出てくるのかと思ったら、ある設定の都合上、3話以上に出番なし。成歩堂との絡みも最小限に留めているなど、アピールするぐらいならもっと出せよ…とか思ってしまった。 対照的に4以来の登場になった茜は登場場面が多かったから、尚更思う。 一応、それのフォローとして、特別篇では全編に渡って登場したけど…。 更に今回はクライン王国側を成歩堂、日本側を王泥喜という感じに分けていたが、終盤になってその分割が意味を無くしてしまうのにも違和感。最終話も最終話で、成歩堂は主人公というよりはサポートキャラクターで、王泥喜の方が主人公とも言える感じだった。ある意味、4の雪辱を果たした感じではあったが、ダブル主人公を謳っているのにこれはムジュンしてないか…と思ってしまった。 前作も成歩堂が主人公に復帰と言いながら、実際は王泥喜、心音のトリプル主人公だったというものだったが、また同じ事を繰り返すというのはどうなんだろう。こういう内容なら、普通に王泥喜が主人公だとアピールした方が良かったように思う。発売後に賛否両論になっている今作だけど、それも全ては宣伝におけるムジュンも大きいのではないのかと。宣伝するにしても、ちゃんと本編を鑑みて実施して欲しいなと改めて思うばかり。 ■良作だけど、次回作はもう少しスピーディに。 最終的には非常に満足できる内容で、良作と言い切れる出来ではあった。前作で大きな難点とされてた箇所は軒並み改善されたし、シナリオも二話以降は見事な出来。難易度も手強くなりながら、シリーズ初プレイのプレイヤーへの配慮も忘れない適切なバランスに落ち着いてたし、ムービーやボイスを効果的に使った演出も秀逸。登場キャラクターも二話の真犯人のほか、ナナシーノ・ゴンビェ(仮)、三話の被害者マルメル・アータムと、強烈な印象を残したキャラクターは多数。ボイス的な意味で、ラスボスも威圧感十分でした。 けど、凝り過ぎたグラフィックによるテンポの悪化、宣伝との矛盾など、新たな課題も沢山残された印象。特にテンポに関してはシリーズの特色でもあったように思うのに、今作でそれが引っ込んでしまった。巧さんが絡んでないが故に仕方がないと思えるところはあれど、冗長な構成が悪い方向に作用するのは『蘇る逆転』の五話で明らかにされていたはず。それを踏まえず、やりたい放題やっちゃってたのは拙かった。 エンディングも大団円だったとは言え、これ以上、このメンバーで新作を作るのは限界なのでは…と思うところがあったのが気がかり。特別篇をプレイしてクリアすると、余計にその思いが強くなるというか…。 何も次は巧さんに復帰して欲しいとまでは言わないけど、次回作では何故、1~3が今なお、好評を博し続けているのか、どういう風にシナリオが展開していくと気持ちいいのかというのを念頭に置いて作って欲しいなと。正直、次を描くにしても成歩堂を主人公に据えるのは”腰的な意味”で限界があるようにも感じてしまうが、今度はテンポ良く遊べる逆転裁判というものを見せて欲しいところであります。 その前に『大逆転裁判』の続編が挟まるのだろうけど。
by box057
| 2016-07-23 20:25
| ゲーム感想 / 紹介
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